世界遺産:ラ・ルヴィエールとル・ルーにあるサントル運河の4つのリフトとその周辺

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訪問日時:2017年7月22日、午前11時頃

この日はクルマを返却する日。ブリュッセルからリールへ向かう途中に立ち寄ったのがこちらの施設。立派なベルギー世界遺産なのですが、全く知名度のないところではないでしょうか。もちろん僕もここへ来る前は全く知らなかったです。しかし、これまでの世界遺産の中でも特に楽しかったところ、間違いなしです!

ブリュッセルから南へ1時間の場所

まず場所を確認。ベルギーは小さい国なので公共の交通機関で行くことはできるとは思いますが、周りには目立った観光地は全くといっていいほどないのでガイドブックでも絶対に取り上げられそうにない場所です。

位置はブリュッセルのほぼ南。前回の投稿でご紹介したボワ・ドュ・カジエやシャルルロワのすぐ西隣、意外と近かったのですね。ブリュッセル市内からはクルマで1時間ほど。ほとんど高速道路での移動なのでスムーズな行程でした。

現地へ到着、どうして世界遺産? すぐに理由が判明

とりあえずGoogleマップの指示に従いながらどちらかと言うと森の中を通過しながら来ましたが、現場に近づくにつれて次第になだらかな平地になり、そして日本的に言うなら昭和の工場っぽいものが多く見えて来るようになりました。そしてゆったりと幅広く流れる運河を発見。しばらく運河沿いにGoogleマップに従って西を目指すこと5分ほどでまず最初の水門に到着。

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確かに思った以上に立派だけど、どうしてこれが世界遺産なのか、当初は全く理解できませんでした。造られたのも19世紀末だし、こうした建築物は別にこの時代なら十分に有りえた気がするのだけれど、そう感じたからです。

しかし、もっと近づいてみてこの水門を運河の下側間近で見た時、その理由が直ちにわかりました。まずその高低差に驚き!20m近くあるかも。

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下に降りられるようだったので降りてみました。あ…、こんなすごい仕掛けが!なんと巨大な船のエレベーターがありました。

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そもそも運河を作る際に問題となるのは、土地の高低差。運河に高低差をつけてしまうと、水が川のように流れてしまうからです。となると自然の川のように上流付近に湖などの水源が必要ですが、そもそも運河とは運搬のための船が通過できることが主目的なので、自然の川の用な流れを発生させる必要性は全くありません。ようするに運河は「平」に作る必要があります。

となると何かしらの工夫を施し、土地の水位差を解消する必要があります。そこでよく使われる手法は「閘門(こうもん)」と呼ばれるもの。

閘門(こうもん)とは、高低差のある水路を閘室と呼ばれる領域に仕切り、船を昇降させる装置のことである。閘室は、水路の前後に開閉可能な扉を有している。まず、その一方のみの扉を開けて船を閘室に導く。つぎにその扉を閉じ、他方の扉側の導水路の開閉によって水位を上昇または下降させる。そして、最後に他方の扉を開けることにより、高低差のある水路における船の行き来を可能にする。閘門はひとつの運河に1個だけとは限らず、むしろ高低差の激しい運河の場合、段階的に船の高度を上げていかねばならないためにいくつもの閘門が連続することが珍しくない。(Wikipedia運河より)

それに対しこのラ・ルヴィエールでは土地の高低差を船そのものをエレベーターで昇降させてしまうという手法「ボートリフト」が取られています。このボートリフトは19世紀の工業技術発展が産んだひとつの賜物で、19世紀後半になりイギリスやドイツ、そしてここベルギーでも活用されるようになったものです。

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閘門型の運河は過去いくつも見たことがありましたが、こんな大規模な機械でまるごと船を持ち上げてしまうことで水位差を解消する仕組みを目の当たりにしたのは、生まれて初めてのことでとても感動しました。

運河の歴史

この運河についての歴史をもう少し語って見ましょう。ラ・ルヴィエール(La Louvière)がサントル運河がはじめてお目見えしたのは、1882年。この地方の石炭鉄鉱石業の発展もあり、大規模な運河の必要性が高まったために建設が計画されたということです。しかし、実際に運河に水が流され稼働するまでには1917年、第一次世界対戦の真っ只中、ドイツ軍によってようやく稼働したということです。ということは、我々が訪れたのは2017年、つまり、ちょうど100周年だったということです。

がしかし、ラ・ルヴィエールと隣の街モン(Mons) の高低差はあまりにも大きかったため、水門を水を遮り船を通すためには、閘門だはなく船ごとを昇降させる巨大エレベータが必要ではないか、と当時建築を請け負ったH.Genard社 のディレクターが主張し、ボートクラフト型が導入されたということです。

こうして造られた4つの運河エレベーターを順次利用して、運河の全長6.97kmかけて66.20mの高低差を克服することができるようになりました。

3番目の運河エレベーターが観光の中心としてよい

さてこのサントル運河には次の4つのエレベーターが現在でも残されています。

  1. Ascenseur N°1 de Houdeng-Goegnies
  2. Ascenseur N°2 de Houdeng-Aimeries
  3. Ascenseur N°3 de Strépy-Bracquegnies
  4. Ascenseur N°4 de Thieu

1番目のエレベーターから2番目のエレベーターへ移動する途中で発見した観光案内施設でいただいた地図を載せておきます。

ちなみにその観光案内所にあった地図です。「他の船のエレベーターも訪れてね(Visitez aussi les autres ascenseurs à bateaux !)」と書かれています。

我々が最初に鑑賞したのは一番目のエレベーター「Ascenseur N°1 de Houdeng-Goegnies 」観光客は我々以外ゼロでしたが、どうやら観光の中心は3番目の「Ascenseur N°3 de Strépy-Bracquegnies」と後述しますがこのサントル運河エレベーターの現代版「Strépy-Thieu エレベーター」のようです。3番目のエレベーターの近くにはこの運河関連のミュージアムがありました。(我々は時間の関係で立ち寄れませんでした。いつもこんなのばかり…)

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我々は「Ascenseur N°3 de Strépy-Bracquegnies」の近くの駐車場(数台しか停められませんが無料)にクルマを停め、まだまだ十分現役のこの運河エレベーターが実際に使われるところを鑑賞しました。

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先程エレベーターを利用してたのはこちらの船。個人所有なのでしょうか。随分とのんびりしていますが楽しそうです!

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なお運河沿いは、絶好の散歩道となっていました。散歩している人、自転車に乗っている人、ジョギングをしている人、いろいろな人を見かけました。ただ、エレベーター付近は段差があるので、ここを通過するには徒歩の場合は階段を上がる必要があります。15mから20mの階段はそれなりの高さがあるのでよい運動になりました。

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手動の橋が面白い!

ところで、運河エレベータとは直接関係がないお話を。ひととおり3つの運河エレベーターを鑑賞し終え駐車場に戻ろうとすると、先程クルマで渡った橋を、観光船が通過する直前でした。とはいえ、橋には十分な高さがないので下をくぐることは出来なさそうどうするのか。

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と思ったらどこからともなくおじさん2人がやってきて、ひとりがなんと遮断器を手動で下ろしはじめました。すぐ目の前には100年前にもかかわらず立派に機械化された運河エレベーターがあるのにここはアナログ?とは思いました。

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がしかしさらに橋が回転することで船が通過できるしくみになっていたのですが、その橋もまた別の人が橋の中央でクランクをクルクル回転させて手動で橋を回転させていました!ここまで手動なのには驚きました。めったに見られない光景。しかしこんな大きな橋であってもひとりで回せるんですね。

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そして無事に橋が川と並行になり、船が通過できるようになりました。おじさんたちも一仕事したぜーって表情で船を見つめていました。

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そして、船が通過してから手動で再び橋をもとの状態へと戻していました。

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現在使われている運河、この地域の高低差が一目瞭然!

最後に。現在でもこのエリアにあるサントル運河、実は現役で稼働しています。ただし、世界遺産となっている4つのエレベータがある場所は現在は工業用途ではなく観光向けに使われています。実際に使われているエレベーターは、4つの運河エレベーターから1km程度離れたところにある「Strépy-Thieu エレベーター」です。

想像以上に大きくてびびった笑。それもそのはず、クラシカルなエレベーターでは、総高低差66.20mをクラシカルな4つの運河エレベーターでは4つで克服した、つまりエレベーター一つあたり平均約16mの高低差があったわけですが、このStrépy-Thieu エレベーターは、地図(再掲)を見ていただいてもわかるように、たったひとつでこの66mの高低差を昇降できるわけです。

といっても実はこの運河ができたのは2002年なので、思っていた以上に最近の出来事で驚きました。

こちら、内部がミュージアムになっていて中でお食事などもできるこれまた観光スポットとなっています。ただし、今回我々はこのあとフランスのリールへ戻ってクルマを返し、そのままTGVでシャルル・ド・ゴール空港へ行き、同日夜に出発する便で帰国するため、Strépy-Thieu エレベーター内部を観光する時間は取れませんでした。

すべての運河エレベーターを巡れる船のツアーあります

実は、世界遺産になっている4つのエレベータと現代的で巨大なStrépy-Thieu エレベーターを船で体験するツアーがあります。先程橋を回転させるときに見た船はこのツアーの船だったようです。2.5時間のツアー、料金も大人でも15ユーロ。結構お得ではないでしょうか。

公式ウェブサイト:http://voiesdeau.hainaut.be/fr/formule/croisiere-sur-canal-centre/

出発点はStrépy-Thieu エレベーターからなので、内部で申し込みができるはずです。事前予約ができるかどうかは直接問い合わせてみないとわかりませんが、地方の観光地なのでまあ当日行っても大丈夫でしょう。月曜はおやすみ、4月1日から10月最終日曜日まで営業しているとのことです。

(毎回行っているような気がしますが)このエリア、このエレベーターは本当に面白かったので、またいつか改めて見に行ってみたいと思います。今度はしっかりと時間を取って、船による運河エレベーター体験ツアー、さらには運河沿いをサイクリングしたいですね。

プロフィール

都内の会社に務める傍ら、休暇を利用して旅行をしたり音楽活動をしているビジネスマン。趣味は、旅行、音楽など。旅行はヨーロッパが中心、現地でレンタカーを借りて旅することにはまっています。フランスの最も美しい村全156箇所を完全制覇!音楽はクラシックが中心。ヴァイオリンの演奏もします。最近は健康のためにランニングを開始。マラソンも。Marathon du Médoc 2014含む数回のフルマラソンを完走しています。